しいたけの「原木栽培」「菌床栽培」論争
シイタケの菌床栽培が可能となり、生産され続けて40数年。
いまだにこの問題が話題となるしいたけ業界。
今回はこの話題に対して物申したいと思います!
「シイタケの原木栽培と菌床栽培、 どっちがいいの?」
シイタケを催事などで売っていると、必ずされるこの質問。
しかし、きのこ業界全体ではあまり注目されていません。
なぜなら、シイタケ以外のきのこはほぼ「菌床栽培」だからです。
皆さんは「ブナシメジ」や「エノキタケ」が原木栽培か菌床栽培か、
気にしたことがありますか?
「ある」という方は少ないのではないでしょうか。
シイタケに限って「原木栽培のものじゃないと食べない」と、
強く主張されるお客様がいます。なぜなのでしょう?
売られているシイタケには「原木」「菌床」の表示が義務付けられています。
その表示だけで商品を選んでいるとしたら、それは損しているかもしれません。
「まずい原木栽培もあれば、うまい菌床栽培もある」と主張します!
「焼きシイタケ」で味比べ
素材の味を比べるなら、なんといってもこれ!
シイタケ数種類を用意して、「焼きシイタケ(塩)」を作り、
実食してみました。
<材料>
A:簡易ハウス原木栽培シイタケ(寒冷紗有り)
B:施設菌床シイタケ
C:放置原木シイタケ
D:簡易ハウスの菌床シイタケ
<実験方法>
上記のシイタケ4種をオーブントースターで6分焼いた。
実食の際は先入観が入らぬよう、目隠しをして、
生産方法がわからない状態で食べた。
「味」、「歯ごたえ」、「総合的な食味」で順位付けした。
<結果>
A > B >>> C >>>> D
1.味
焼きシイタケの美味しさは、かじった時のジューシーさが重要だった。
味の濃さはAの原木栽培の方が少し上だが、
B菌床栽培は水分と共に味が広がるので、A、Bの順となった。
Cは水っぽく、Dは硬くてあまり美味しくなかった。
2.歯ごたえ
「ぷりぷり感」はB菌床の方が上。A原木は少し「しこっ」っとする。
Cはぐんにゃりしており、Dは硬かった。
歯ごたえの部分は好みで左右される。
3.総合的食味
香り、味、歯ごたえの総合で判断するとA原木栽培が1番。
香りの強さ(風味)の点でB菌床栽培が次点となった。
C、Dは香りが薄く、Dはジューシーさも無い。
<考察>
食味上位(A、B)は毎日成長具合を見て回る、
丁寧な栽培方法の生産者のシイタケだった。
食味下位(C、D)のシイタケは、乾燥しすぎていたり、
逆に水っぽく味が薄かったりで、塩焼きとして楽しめない。
シイタケ菌が育つ湿度を適切にコントロールし、
一番良い状態で出荷されたものが美味しいことがわかる。
シイタケ香りは、少し乾燥→適湿生育の繰り返しで生まれるので、
原木栽培方法の方が香りが強い。
しかし、自分は若干シイタケ臭が苦手なので、匂いが鼻につく。
余談だが、菌床も半干しにすると原木栽培に近い味になる。
乾燥することで香りが強くなり、歯ごたえが増すためと考えられる。
今回の食べ比べの結果から、原木栽培は簡易ハウス、
もしくはそれに準じる施設の必要性を強く感じた。
天候がよければ上質なものが出来るが、
乾燥が続くと乾物臭くなり、大雨が降ると、とたんに味が薄まる。
菌床栽培が始まった頃のシイタケは、まだまだ品種改良もなく、
食味が劣るものが多かった。
現在では栽培方法や品種の研究、改善が進み美味しくなっている。
ぜひ、食べ比べてほしい。
そして、改善してほしい点を教えて頂きたい。
まとめ
・美味しさは、原木か菌床かではなく「生産者」で決まる
・香りが強いものが好みの方は「原木栽培」がおすすめ
・香りがマイルドでジューシーなシイタケは「菌床栽培」
原木施設、菌床施設栽培のナメコの試食。
すべてサイズはジャンボ(傘の直径3cm以上)。
・このサイズまで育てると、ほとんど味は変わらない。
・原木は木の皮が付いたので良く洗った。
・そのためか少しぬめりが少ない。
・市販のものは異物を取り除くため、良く洗ってから出荷するので、
味が薄いとされるのかも。
ナメコも「原木か菌床か」ではなく、栽培状況や、
出荷する時の形に左右されている。
シイタケの栽培コストや安全面の違いはこちらで↓
きのこの話 「原木栽培と菌床栽培」