生しいたけの原産地表示が「本当の原産地表示」へと変わります
みなさんはしいたけを購入するときに気を付けて見ている表示はありますか?
原産地はどこなのか、栽培方法は原木なのか菌床なのか。
気を付けていても消費者には伝わらない・わかりにくいのが原産地表示でした。
これまでの原産地表示とこれからの原産地表示の違い
これまでの原産地表示は「どこで収穫されたのか」が基準となっていました。
多くの農産物は土(または水耕培地)に根を張って成長します。
収穫するときは可食部をその土から切り離して梱包し、消費者の元へ輸送することとなります。
さすがに育った大地ごと運ぶことはできませんので、
「原産地表示=収穫した土地(国、都道府県)」となります。
わかりやすいですね。
しかし、ほかの農産物ときのこ類の栽培では大きく異なる部分があります。
きのこは原木(ほだ木)または菌床で育ち収穫される点です。
育つ場所自体が移動可能なきのこ。原産地はどうなるのでしょう?
例えば中国の山から切り出され、その原木にしいたけ菌を接種したとします。
木材に菌糸がしっかりと成長するまで培養し、その後日本に運びます。
その原木を日本の山やハウスで培養して収穫したしいたけの原産地は?
答えは「原産地=収穫地(日本、都道府県)」になります。
あなたがイメージした「原産地」は表記されている国と合致したでしょうか?
国産材を使って、福岡県で栽培している当組合のしいたけは「福岡県産」。
外国産材を使って、中国で培養し、輸入して福岡県で収穫しても「福岡県産」。
わかりにくいですね。
過去、生しいたけの輸入量は国内の消費量の4割近くを占めていました。
2006年には残留農薬に関する新しい制度が導入されたことから減少し、
現在では国内の消費量のおよそ2%ほどにまで減っています。
その一方で、菌床の輸入は増えています。
輸入した菌床から生産した生しいたけの量は1万トンあまりと推計され、
国内の消費量全体の15%を占めると見られています(林野庁調べ)。
つまり、「原産地表示」としては海外産生しいたけが減っていても、
海外で育ったしいたけは採取前に培地ごと輸入されているだけで、
国内で消費されていることは変わりないのです。
そこで「菌を植えつけた場所を生しいたけの原産地として表示することを義務づける」よう、消費者庁が新たにルールを見直す方針を固めました。
新ルールで変わること
新ルールになることで、生しいたけの原産地がわかりやすくなります。
国産を選ぶことで安全性を得たい。県産農産物を買って地元を応援したい。
そんな消費者のニーズに合ったルールになることを願います。
消費者の中には海外産でも特に構わない。という方もいるでしょう。
しかし、国産生しいたけをきちんと選ぶことは味や安全性だけの問題ではないのです。
日本国内で原木や菌床を生産している農家はほぼ近隣県産材を使用しています。
しいたけを栽培するのに適しているのはシイ、ナラ、クヌギなどの広葉樹です。
この樹種はドングリが実ります。多くの野生生物たちがドングリを食べて生きています。
伐採された広葉樹は、切り株から新たな芽を出し、盛んにCO2を吸収して成長します。森は二酸化炭素を吸収し、貯蔵する役目も持っているのです。
つまり、国内の広葉樹林の計画的な利用は日本の生態系保全や、二酸化炭素の削減など環境問題ともつながっているのです。
まとめ
・生しいたけの原産地表示が従来のルールでは輸入された原木・菌床から栽培されたのか分かりにくかったが、新ルールにより明確になる
・国産生しいたけを選ぶことは国内の環境問題にもつながる
当組合の生しいたけはJGAPにより審査を受けた安全な国産材を使用し、
福岡県東峰村の山奥で、菌床の生産から培養、収穫、発送までを行っています。
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